ウッソーッ

yuzyuz2010-12-29

(前回までのあらすじ)
姿を見なくなって約7時間後、小豆(猫・7ヶ月・♀)を
発見したのは裏山のヒノキの上、地上15メートルの枝の上でした・・。
(ちなみに右の写真は茶の間の水屋の上に上がった小豆)


「ウッソー!」
よくテレビのニュースで高い木の上に上がって下りられなくなった
猫を、レスキュー隊が出動して助けている・・というような
画像を見るけれど・・ねぇ。
レ、レスキュー?
こんな山奥まで来てくれるかしら?
っていうか、もし本当に来てくれたとしたら
(この小さな集落が)エライ騒ぎだろうなぁ。
う〜ん、どうしようー。
「ミャー」


「とりあえずハシゴを取ってくるから、ここにいて」
と言って夫が家に戻っていった後、私は上を見上げていたんだけど
小豆は私たちを見て何とか下りようと思ったのか
細い枝の上でモゴモゴ動いているのよ。
しがみついている枝はもう葉っぱも生えていなくて、
ほとんど枯れているので
パキッという音と共に折れてバラバラと落ちてくるんだわ。
「アーッ、あずちゃん、動いたらアカン!」


万一落っこちてきたら受け止めようと思い、
私はジャンパー脱いで両手の間で広げてね、
小豆から目を離さないようにしていたんだけど。
小豆は少しずつ枝を伝って幹に爪をかけながら後ずさりして
2メートルくらい下りてきたのよ。
おっ、うまいなぁ。
猫も後ずさりできるんだなぁ。ひょっとしたらうまく下りられるかしら?
でももうそこからは枝がないという地点まで来て止まった・・。
「ミー」


そうしているうちにやっと夫がハシゴを持って帰ってきたのよ。
何も持っていなくてもしんどい急坂を急いで上がってきたので
息も絶え絶え。
「あかん、めまいがする。ちょっと休ませて」
と言って少し座った後、ハシゴを木に立てかけようとしたんだけど
木の高さに対して圧倒的にハシゴの長さが足りない上に
地面が斜面で安定しないのよ。
やっと立てかけたハシゴに足を架けてもすぐに
ズルッと横にすべって、危ない。
ここで夫がケガをしたら相当ややこしいので
「もうやめて!ハシゴはあきらめよう!」
と言って、上を見上げた。
「ミャー」


と、小豆が自分で何とかしなくては・・と決心したらしく
枝のない幹を少しずつ後ずさりしながら下りてきた。
あっ、大丈夫かな?
「あずちゃん、うまいうまい!」
「ミー」
「ゆっくりゆっくり!」
と励ましながら夫と二人ジャンバーを広げて
いつ落っこちてきても受け止められる体勢を取ったのよ。
「ミュー」
ヒノキの皮がパラパラ落ちてきて、私の目や口に
はいったけど、そんなこと構っちゃいられない。


でもまだ大分上の方だから、今落ちたら骨折するかなぁ?
落ちたところに先のとがった木が生えていたら
刺さるんじゃないかしら?
内臓破裂とかになったらどうしよう?
今日は日曜だから病院、休みだしなぁ。
受け止める私たちも衝撃で倒れたときに斜面を転がるとか
倒れたところにとんがった木があったらマズイなぁ。


・・というようなことを2秒くらいで考えたんだけどね。
そうしている内に小豆がやっと地上5メートルくらいまで下りてきた。
これくらいだったら落ちても大丈夫かも?
「あずちゃん、もう飛び降りてもいいよ!」
「ミャー」
結局地上2メートルくらいのところから夫の身体を頼りに
幹から離れ、やっと地面に降り立ったのよ。
「やった〜!良かった!」


小豆は尻尾をいつもの3倍くらいに膨らませて
そのまますごい勢いで斜面を駆け上がっていった。
ああ、もう大丈夫だ。
夫が念のために持ってきたリードを持って後を追いかけ、
私はハシゴを持って斜面を上り、
山の稜線の電気柵をくぐって家側の斜面をおりはじめた。


すると下の方に小豆を抱いた夫が見えたのよ。
「確保しました!」
「ああ、良かった。(やれやれ)」


その時、たまたま近所の方が下の道を歩いていて
小豆を抱いた夫を見つけてね。
「どうなん?(何でこんな所に?)」
と聞かれたので夫が説明しようとその人の所に近づいていったら・・
興奮状態の上に見慣れない人に会った小豆がパニクり、
どうしたと思う?
何と夫の腕の中から飛び出して
リードをつけたまま、また全速力で斜面を駆け上り
あっけに取られている私の横を通り過ぎて、
アッという間にまた裏山に消えていったんです。


「ええーっ!ウッソー!」


こんな展開ってあるの?


(さらにつづく)